こんにちは。東京のひとです。
仕事がうまくいかない。時間と労力は投下しているのに、前に進んでいる気がしない。
やらなければならない問題はわかっているはずなのに、正しいアプローチがわからなかったり、努力しても解決に近づいている実感がない。
今日は、そんな人に贈りたい珠玉の一冊を紹介します。
安宅和人氏の『イシューからはじめよ』です。
課題解決は、課題を見つけることから始まる
世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。
イシューからはじめよ
世の中には「課題」が溢れていますが、本当に解決する必要のある課題(=イシュー)はごくわずかです。
ですからまず、直面している課題がイシューであるのかどうかが問題となります。
「なんちゃってイシュー」
世の中には、一見問題に見えるけれども実は答えを出す必要がなかったり、本質的ではなかったりする「なんちゃってイシュー」が溢れていると、筆者は言います。
例えば、あるカフェの店舗でコーヒーの売り上げが低迷しているとします。
店主は「コーヒーを更に売れるように改善するか、思い切ってタピオカなど他のドリンクを強化するか」などと思い悩んだりするわけですが、
まずはコーヒーの売り上げが低迷した理由を突き止めなければ、意味のあるイシューを立てることはできません。
- 近所に競合のカフェができた → 競合になく、自店舗にあるバリューは何か
- コーヒーの市場自体が縮小している → 代わりに参入できる市場はあるか
コーヒーの売り上げが低迷した理由によって、立てるべきイシューは全く変わってくるからです。
このように、一見問題に見えるけれど実は本質的ではない問いを「なんちゃってイシュー」と言います。
本当に取り組む価値のある「イシュー」の条件
では、どのような問いが取り組む価値のある「イシュー」なのか、イシューの見分け方が問題となります。
筆者は本当に取り組む価値のある「イシュー」の条件として、以下の3つをあげます。
- 本質的な選択肢である
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
順に紹介します。
① 本質的な選択肢である
「天動説か、地動説か」というような、カギとなる選択肢が提示されていることはイシューの絶対条件です。
例えば「店の売り上げが下がっている」という場合、「客単価が下がっているのか、客数が減っているのか」というイシューが立てられるでしょう。
② 深い仮説がある
よいイシューには、仮説が立てられていることも条件です。
さらに仮説は、常識に反していればいるほどインパクトが大きくなります。
「太陽が地球の周りを回っているようにしか見えない」状況で「地球が太陽の周りを回っているのでは?」という仮説は、大きなインパクトを持って受け止められました。
常識に反する仮説は大きな枠組みの更新を迫ることになるので、本質的な問いになる可能性が高くなるのです。
③ 答えを出せる
本質的な選択肢があり、深い仮説があってもなおイシューではない問題があります。
それは、「(少なくとも今ある技術では)答えを出せない」問題です。
答えが出せない以上、いくら核心に迫る問いであったとしても取り組む価値のあるイシューとは言えません。
以上が取り組む価値のあるイシューの見分け方です。
課題を立てることは、課題を解くことと同じくらい大切である
本書はここから、漠然とした取り組みにくい問題を「イシュー」に変換する方法や、「仮説」の重要性の話に移っていきます。
私が本書で最も重要なメッセージだと思ったのは、以下の一節。
世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。
イシューからはじめよ
課題解決のツールやスキルがかつてないほど多様化・進化している時代にあって、
この「本当に解決すべき課題を見出す能力」はますます核心的なものになっていくでしょう。
イシューを見出す方法として、ひたすらたくさんの問題を解いてみて考える、というパワープレイを筆者は「犬の道」と呼んで否定します。
それも時間がかかって大変、とか楽しくない、とかいう理由ではなく「あなたのバリューが下がるから」という理由で。
ひたすら「価値の最大化」という軸で語ってくれる、筆者の潔さを感じます。
おわりに
これまで私は、課題解決の方法とか効率化とか、いわゆる「ライフハック」と呼ばれるものを中心に読んできました。例えばこのあたりの本です。
しかし、「何が解決すべき課題なのか」「課題はどう見分ければ良いのか」という視点は欠けていました。
本書はイシューの見分け方の指針を与えてくれるだけでなく、
自分が本当にやらなければならないことをやる、という「自分の価値を最大化する生き方」を教えてくれる、珠玉の書だと感じました。
ぜひ読んでみてください。