こんばんは。
前回の記事では、大学にかかるコストとリターンを各種統計から洗い出し、平均的には期待リターンのが大きそうだぞ、というところまで考えました。
今回は年収の増加曲線から、損益分岐点を計算します。奨学金についても少し考えてみたいと思います。
大学を金融商品として捉える -『なぜ投資のプロはサルに負けるのか』 - 東京の井戸
年齢とともに上昇する年収から損益分岐点を割り出す
ざっくり平均年収と勤続年数を掛け算してみたら、コストより高いリターンを得られそうだった。
大学という投資は、先にコストを支払って後でリターンがあるというタイプです。
なので、「じゃあ何年働けばコスト回収できるのさ」という疑問が湧いてきます。
年収が一定と仮定するならコストを平均年収で割ればいいのですが、
ふつう年収は勤続年数とともに上がっていくので、
今回はもう少し踏み込んで、年収曲線を用いて分析してみます。
難しそう
簡単にするためにグラフを描くんだよ
年齢とともに年収はこう上がる - 年収曲線
さっそく厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」から年齢と年収の関係を引いてきました。これをグラフにすると
こうなります。
はじめはあまり差がないですが、年齢が上がるほど年収に差が生まれるのが読み取れます。
今は大卒という資格によって年収がどう変化するかを検討しているので、
グラフ中の赤と青のバーの差(大卒資格によって増大した年収)をプロットした別グラフを描いてみました。
年収曲線の差から損益分岐点を計算する
少なくとも50-54歳までは一貫して差が開き続けることがわかります。
この差を足していくと、以下のグラフになります。
これは、「○○歳までに大卒という資格によって余計に得た金額の合計」なので、この額が前回の記事で求めた大学のコストを上回れば、めでたく投資元本を回収したことになるのです*1
参考までに、
公立高校→公立大学と進み、実家から通う場合の平均コストは
C=32+240+0+860=1132万円
前回の記事
こちらのモデルのコストを回収できるのは大体39歳で、
私立高校→私立大学と進み、下宿先から通う場合の平均コストは
C=51+430+580+860=1921万円
前回の記事
こちらのモデルのコストを回収できるのは大体45歳です。
これが、大学という投資の損益分岐点であると言えます。
ずいぶん長い話だなあ
でも、コストを回収してしまえば後は全部利益だよ
奨学金の考え方
さて、このモデルでは奨学金について考えていませんでした。
無利子の奨学金であれば、結局後になってから返すのでトータルのコストは変わらないのですが、
有利子の場合、金利がコストに上乗せされることになります。
例えば、4年制大学の学費などを月額12万円利率1%で借り、20年かけて返済する場合、
576万円の借り入れに対しおよそ62万円の金利がかかり、コスト増となります。
前回の記事で検討した通り、奨学金を借りても大学を出ておくことはなお一定の投資効果がありそうです。
とはいえ無視できない金額だからしっかり考えて借りたいね
おわりに
「子どもへの投資は回収しようとしてはいけない」などと言われることがありますが、
具体的に損益分岐点を計算してみることで、
教育という投資が本当に息の長いものであることがわかりました。
親には感謝だね
大学を金融商品として捉える -『なぜ投資のプロはサルに負けるのか』 - 東京の井戸
参考にした媒体
*1:本当は「現在価値」に直して考えてやる必要がありますが、大卒者・高卒者それぞれ現在価値に直しても差は維持されるため、今回のエントリではそこまで厳密に計算していません。厳密に計算すると現在の額面ではもう少し下がり、損益分岐点に至る時間はより長くなります。